デスモドロミック機構の仕組み

デスモドロミック機構とは?

デスモドロミック機構というのは、エンジンの吸気と排気の流れをバルプスプリングを使わずに行うシステムのことです。
バルプスプリングの代わりに、ロッカーアームとカムを使って開閉することになります。
具体的には、それぞれのバルブに対して2組のロッカーアームとカムが設けられるのがきほんとなります。
このセットでバルブを引き上げる動作と押し下げる動きを別々に行い、バルブの開閉を行うのです。

もともとは1930年代くらいにはベンツが自動車のエンジンシステムに採用したもので、システム自体は昔から存在します。
主に4ストロークのエンジンで使われる機構で、バイクではドゥカティが使用するケースが多いです。

デスモドロミック機構の仕組み

上記のように、デスモドロミック機構は1つのバルブに2組のカムとロッカーアームを使います。
開いた状態のバルブを閉じる際には、ロッカーアームが慣性の力で行います。
そして補助の役割を果たすトーションバー・スプリングが備えられていて、この荷重によってバルブの密閉を確実なものとすることができます。
バルブを開く時にはロッカーアームがカムによって押し上げられて、いわばフタを機械的に開くことになります。

このようにバルブの開閉のどちらの動きも、1セットのロッカーアームとカムが強制的に行うことになり、従来のバルブスプリングによる開閉とは違う動きを取ることができます。
特に高回転時でも確実にバルブの開閉を行い、タイミングをずらすことなくコントロールできるシステムとなっているのが大きいです。

他のエンジンにはないデスモドロミック機構ならではの強み

通常のバルブスプリングを使った開閉では、どうしても回転が速くなると誤差が生じる傾向があります。
特にバルブを閉じる動作が不安定になったり、完全に密閉できなくなってしまうのです。
これはバルブサージング現象と呼ばれるものです。

一方、デスモドロミック機構では上記のようにロッカーアームが慣性で自ら動き、トーションバーの重みが加わることで開口部がしっかりと閉じられます。
その分、室内圧力が確実に高まりますので燃焼効率が落ちることはありません。

さらにバルブスプリングを使った開閉だと、高い圧力がかかり高回転で回していると通常よりも強い勢いでバルブが開いてしまうことがあります。
これはバルブジャンプと呼ばれる現象です。
また、その状態から跳ね返って急速にバルブを閉じてしまうバルブバウンスという現象も同時に起こることが多いです。

こうなるとバルブの開閉タイミングがずれますし、当然燃焼室の圧縮比率が崩れてしまうので不完全燃焼を引き起こします。
しかし、デスモドロミック機構であれば強制的に開閉するのでこうした現象が起こりにくいのです。